メモ

●2012.01.31

・21世紀は江戸に学べ

edonimanabe

書籍紹介
二十一世紀は江戸に学べ
近代科学技術文明を問い直す

著者:池田武邦
発行:A&Aパブリッシング

池田武邦先生が世界建築家連合(UIA)の未来の建築委員会(AOF)の委員長をされているときに委員としてお誘いを頂いて以来、ずっと環境に関する御指導を頂いてきました。二十世紀末、私は妻を亡くし、先生と死とどう向き合うかをお話しする中で、建築の死についても考えなければいけないと思うようになりました。スクラップ・アンド・ビルドへの反省と、都市の記憶をどう受け継ぐべきか。人間と同じように、建築にも尊厳のある終末を迎えることはできないのだろうか。そうして始まった建築再生デザイン会議(ARDC)の活動は、池田先生に議長を務めていただき、様々な問題を掘り起こすきっかけになりました。先生の著書「二十一世紀は江戸に学べ」の中で、建築の保存問題について記述されています。中村享一。

目 次

第1部 原風景

 第1章 藤沢と「土佐」

自然がいっぱいだった/小学校時代の人々との出会い

 第2章 戦火を潜り抜けて

湘南中学校/海軍兵学校/戦場へ/マリアナ沖海戦/レイテ沖海戦/沖縄海上特攻作戦

 第3章 体験としての戦争

戦争の真実を語ることの難しさ/常に死と向き合う日々/武士道という文化/生と死が一つになるとき/敗戦によって見えてきたこと

 第4章 人間を超えた何かに動かされる

二十一歳にしてすでに余生/神さまが動かしている/建築に入ったきっかけ

第2部 設計事務所入社-建築生産の合理化と近代化 

 第1章 銀杏の木の下での講義

焼け野原に見た校舎/伊藤忠太・堀口捨巳両先の思い出

 第2章 (株)山下寿郎設計事務所
     -現場に学んだ日々

「山下」に入ったきっかけ/当初は進駐軍の仕事中心/新材料の登場/建築現場で死者は当り前/モデュラーコーディネーションの研究

 第3章 寝食を忘れ、建築を問いかける

福島県庁舎コンペ/のびのびと自由に/コンペ五割打者/栄養失調になる/高井戸幼稚園が建築雑誌の表紙に/組織と個人

第3部 創造的組織づくりへの挑戦

 第1章 「日本設計」設立に至る最後の決断

組織の結成/個人と組織の問題/プロフェッションは強制されるものではない/(株)日本設計事務所創立

 第2章 困難を乗り越え生まれたチームワーク

霞ヶ関ビルの設計プロセス/超高層煙突設計の困難/旗は振らず、理念は明確に/筑波研究学園都市での挑戦/デザイン・フィロソフィーの貫禄

第4部 超高層-環境破壊へのカウンタープロポーザル

 第1章 人間も自然の一部

超高層ビルの必要性/環境破壊に異を唱える/ある雪の日のできごと/自然に対する畏れを忘れるな/自然の風をビルの中に取り入れる

 第2章 建築家は作品で評価される

クライアントの要求を満たす限界/就職志望者を夏休みにスタディ/一度だけ九十九パーセントの反対を押し切る/旧建築家協会入会と設計入札

 第3章 環境破壊へのカウンタープロポーザル

琵琶湖の生態系を守りたかった/「博物船」を提案/三年間、滋賀県からの仕事はストップ/吉良龍夫先生に気持ちを伝えた/行政の片棒を担ぐ学者たち

 第4章 都市開発と歴史的環境保全の相克

近代化に乗り遅れた鞆の浦/江戸時代のままの港を/ビジョンが持てない住民/新聞紙上で緊急提案

第5部 次世代へ伝承するために-ハウステンボスから邦久庵まで-

 第1章 地域に接する「作法」の大切さ

神近義邦氏との出会い/地元に入るときの作法/代々伝わる茶碗蒸しの味/闇のある風景/自然石による護岸工事/諫早湾について

 第2章 オランダ村、そしてハウステンボス

「松の井」の改修からオランダ村へ/「プリンス・ウィレム」の来航/環境保全と経営体制との対立/都市の物語をつくる/社員の環境教育/ハウステンボスを本物のまちへ

 第3章 環境文化研究所

環境文化研究所のシステム/自然はもっと奥深い/ハウステンボスの実験の理論化/設計へのフィードバック/生活から環境を考える

 第4章 鵜養に見る生活文化の豊かさ

十年間で二千の集落が消滅した/二十一世紀の理想郷の実現/堰を活かした見事な都市計画/「木出し」と「山分け」/補助金が農村を駄目にする/生産者と消費者の顔の見える交流/参道を切断するハイウェイ/精神的空間の回復

 第5章 時代の要請を受けて

池田塾ができたきっかけ/有志による塾の継続/長崎綜合科学技術大学で学生たちに伝えたかったこと/建築の保存問題について/ハウステンボスの会長となって/環境会計という視点/ハウステンボスの創造型環境会計の意義/ハウステンボスの環境会計/超高層から茅葺きまで

 終章 近代科学技術文明を問い直す
   -持続可能な循環型社会の創造のために-

近代科学技術文明の成果/新たな問題の生起/持続可能な循環型社会/手本は江戸/近代合理主義の陥穽/文明と文化

あとがき

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